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判例紹介

【裁判例紹介】鑑定書は本当に効果的な証拠になるか?

専門家の作成した書面が証拠として提出された場合、それは証拠としての価値が非常に高いのでしょうか。
専門家は、その道に長けた人ですし、その専門的な知見から作成された鑑定書や意見書は一般的に非常に参考になるものだと思われます。

しかし、以下の裁判例では、専門家が作成した鑑定書が証拠として提出されましたが、問題となった事件に対して参考にならないものであると判断しました。

事件の概要としては、交通事故に関するもので、車同士は接触していませんが、事故を避けようとして急ハンドルを切り、急ブレーキをかけたため、それにより、頸椎捻挫(むち打ち)となってしまったため、その損害賠償を求めた事案です。

第1審は、頸椎捻挫になったのは、急ハンドル、急ブレーキとは因果関係がないとして、損害賠償を否定しました。これは、同じような実験をしたところ、被害者に加わる力としては、けがをするほど強くないものであるとした結果が出た被告提出の鑑定書が参考にされたものであると考えられます。

これに対して、被害者(原告)側が控訴し、東京高裁判決平成30年8月8日(判タ1455号61頁)では、次のように判断されました(抜粋して引用します。)。

(3)記載のB作成の鑑定書と題する文書(甲9)及び実験結果報告書(甲10)は,採用することができない。その理由は,次のとおりである。
 ア (3)のアは,理論的な解析としては誤りではない。問題は,1.0Gという数値を,(3)のイ以下(特にウ及びエ)で印象操作的に使用し,読者(原審裁判官を含む。)を誤解と混乱に陥れている点である。 
(中略)
B作成の鑑定書と題する文書(甲9)の記載は,負荷の加わる部位や態様に応じた人体のぜい弱性に目を配ることなく,単純に加速度の数値のみに着目して結論を導いている点で,採用できない。
(中略)
 エ 以上に検討したところによれば,本件回避措置によって生じる程度の数値の加速度で傷害が発生することはあり得ないという加速度の数値のみに着目した経験則は存在しないから,この点に関する反訴被告の主張は採用することができない。
 B作成の鑑定書と題する文書(甲9)は,現実の交通事故や人間の実生活において起こる出来事についての目配りや想像力が欠如し,文献上の数値や実社会と隔離された研究室の中で得られた数値を形式的に組み合わせただけの内容のものにすぎない。B作成の鑑定書と題する文書(甲9)は,いわば数字のマジックによって,読者を誤解に導き,裁判を混乱に陥れるものであって,鑑定書という表題を付するに値しない。B作成の鑑定書と題する文書(甲9)及び実験結果報告書(甲10)は,採用することができない。

高裁では、鑑定書は、理論的な解析であると認めているようです。しかし、あくまでもそれは数値上のものにすぎず、交通事故の実態を踏まえていない机上の空論にすぎないとしました。そして、交通事故に際して参考にならない以上、その鑑定書に基づいて判断することはできず、他の証拠から、頸椎捻挫と交通事故との因果関係を認め、損害賠償の支払いを命じる判決をしました。

鑑定書だけを見れば、実験結果を数値化しており、客観的な結果として参考となるものでしょう。しかし、その結果が、事件の実態に全く則していなければ、それは参考になるものとはなりません。本件について、裁判所は、非常に厳しい論調で、証拠として提出された鑑定書の証拠価値に対して、指摘しています。

裁判をする上では、どちらの立場に立っても、一見すると非常に有利(又は不利)になる専門的な知見に基づく証拠でも、疑問をもってしっかりと検討することが必要になるということを強く印象付ける裁判例です。

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