弁護士法人はるか|長野法律事務所

弁護士の正しい”決断”の仕方

長野の名峰、八ヶ岳、阿弥陀岳南稜で、7人が滑落、3人が亡くなる事故がありました。
ヤマを愛しヤマに散った3人の岳人のご冥福をお祈り申し上げます。

同日同時刻、私はま隣の権現岳、旭岳東稜におりました。頭上をずっとヘリが旋回していることに気が付いたのは、核心部を抜け、稜線についたころだったでしょうか。

本件は、しかしながら、不慮の事故、とは言えないでしょう。
一部報道には「強風のため滑落」とありました。実際には、この日の風は暖かく、たしかにやや強い風ではありましたが、稜線としては普通でした。また風がやや強いだろうことは、天気予報から明白でした。
次に、気温が高く雪が不安定であったこと。しかしこれも天気予報と、数日前の降雪を考えれば入山前から明らかで、遅くとも入山時に一歩踏み出せばすぐにこれはやばいなと判ったはずです。


そして最後にアンザイレンという技術です。長くなりますので割愛しますが、これは、よほどの技術がない限り、ひとり落ちたら全員が危険にさらされる技術です。ちなみに私の所属する山岳会では、原則、アンザイレンは採用していません。

私たちのパーティも、天候リスクと着雪のリスクは十分にアセスメントし、そのうえで入山を決断しました。事故を起こしたパーティも、そうだったはずです。

そのうえで残念ながら、リスクが顕在化してしまいました。
誰が悪いという問題ではありません.これは弁護士の仕事にも通じることです。

訴訟、交渉は常に賭けの要素を含みます。リスクを把握したうえで、実行するかどうか。それが決断です。

弁護士稼業は常に決断の累積で、そして、正しい決断の勘を磨くためにも、日々の精進を怠ってはなりません。それはヤマヤが、正しい決断の勘を磨くために、常に訓練を怠ってはならないのと、同じなのです。

最後に、あらためて。もう、痛みも恐怖も、危険もないところで、どうか、安らかにお眠りください。