弁護士法人はるか|長野法律事務所

相続・遺産分割事例紹介 10

解決事例の紹介

【相談内容】

80歳の老人Aさんから相談がありました。老人は割烹料理店を経営していますが,長男Bは高校を卒業させると料理人の修行に都会の料理店に行かせたそうです。今は家業を継いで頑張っていますので全財産を相続させたいと思っています。老人には他に子供が2人C,Dがいますがその子たちは大学に進学させて大企業で働き,2人ともマンションを買った時には購入の資金援助しているため,2人は私に遺産はいらないと言っています。

 しかし,私が死んだあとは気が変わることも考えられるので,どのようにしておくのが良いか相談に来られました。

 なお,妻は5年前に亡くなっているとのことです。


【交渉結果】

 長男に全財産を相続させる遺言を作成することが必要です。

 その上で,長男以外の子C,Dの気持ちが変わらないうちに遺留分を放棄してもらうことが必要です。

 事前に,長男以外の子C,Dたちに遺留分を放棄してもらうために十分話しあって意思を確認することが必要ですし,遺留分を放棄する代償としてある程度の金銭を渡すことも必要であることをAに説明しました。

 後日Aが来所してC,Dと話し合い遺留分の放棄をすることを改めて確認したとのことでした。遺留分を放棄するに当たり各人に代償金として800万円ずつ渡すことも話して納得したとのことでした。

 そこで,CとDに連絡を取り家庭裁判所に遺留分放棄の許可の手続きをして許可を得る必要がありますので,C,Dから家庭裁判所に遺留分放棄の許可の申立てをすることを説明しました。

 家庭裁判所からはC,Dの意向を聞き最終的に遺留分相続放棄の許可の審判が得られました。

【弁護士からのコメント】

民法では,被相続人の生前に相続放棄をすることを認めていませんので(民法915条1項),父親Aが子C,Dに「父親Aの遺産は一切請求しません。相続を放棄します」との念書を書いても無効となります。

 それは,相続人に圧力を加えて相続放棄を防止する必要があるからです。

 ただ民法は、被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をすることを認めています(民法1049条1項)。

 それには,家庭裁判所が調べて許可の審判を得る必要があります。